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デュアル・クラッチ・トランスミッションの仕組みとは。

 

最近では二輪車初として「ホンダ CRF1000L アフリカツイン」などに搭載された「デュアル・クラッチ・トランスミッション」という機構ですが、自動的にギアを変速してくれる機構というのはなんとなく理解できても、実際はどういった機構なのか、よく分からない部分があるかと思います。

page2_1 Photo By Honda Motor Co., Ltd.

ではその「デュアル・クラッチ・トランスミッション」がどういった仕組みのものなのか、まとめてみたいと思います。

「デュアル・クラッチ・トランスミッション」とは

「デュアル・クラッチ・トランスミッション」は自動変速の機構ではあるのですが、通常のオートマチックトランスミッションと違って変速機構そのものはマニュアルトランスミッションと同じ構造になっています。

デュアル・クラッチの名前の通りクラッチが2枚存在し、1枚のクラッチは1速-3速-5速用(Aクラッチとします)、もう1枚のクラッチは2速-4速-6速用(Bクラッチとします)として割り当てられています。

発進時にはAクラッチが繋がっており、1速のギアと繋がって回転し始めますが、この時点で2速のギアも一緒に回転しています。 一定の回転速度になるとAクラッチの繋がりが切れてBクラッチが繋がり、1速から2速へと変速します。

つまり1段上、または下のギアは常に一緒に回転しており、奇数ギアを回すAクラッチから偶数ギアを回すBクラッチに自動的に切り替えるシステムで、クラッチが2枚存在する事から「デュアル・クラッチ・トランスミッション」という名称になっています。

通常は、4輪車の場合はシフトレバーを操作して、2輪車の場合はシフトペダルを上げ下げしてギアを変速しますが「デュアル・クラッチ・トランスミッション」の場合はシフトモーターがその役割を担い、変速を自動で行ってくれます。

「デュアル・クラッチ・トランスミッション」のメリット

このように、次に移動するギアが常に待機している状態になるため変速の切り替え時間が素早く、変速のショックも少ない事がメリットです。
またターボ車のようなトルクが太いエンジンとの相性が良いと言われており、ダウンサイジングターボ車などに適した機構であると言えます。

自動変速なのでドライバーまたはライダーは、シフト操作に気を取られる事なく、ハンドル操作とアクセル操作に集中出来ます。

AT限定免許でも運転出来るという利点もあり、例えば「日産 GT-R」のようなハイパフォーマンスなスポーツカーでも、教習所で乗ったオートマ車と同じく発進させ、運転する事が出来ます。

「デュアル・クラッチ・トランスミッション」のデメリット

デメリットとしては、ミッション機構の重量増が挙げられます。 しかしながら現状のデュアル・クラッチ・トランスミッション搭載車の多くがスポーツモデルのようなエンジンパワーのある車種で、多少の重量増は運動性能でペイしている気もします。

そして「三菱 ランサーエボリューションX」などで言われているような「ミッションのトラブル・故障の際の修理費が高額になる」というデメリットがあります。

変速機構が2つあり、構造も複雑になるので致し方ない部分ではありますが、実際に所有したクルマが故障した場合はと考えると、デメリットになるかと思います。

まとめ

オートマチックトランスミッションが世の中に出てきてから既に70年以上が経過し、今では新車で販売されているクルマのほとんどがAT車になりました。

統計データを見てみると、2011年の時点で自動車のMTとATの割合は「1.5%:98.5%」という感じになっています。(乗用車の販売台数調べ)

1985年くらいまではATの方がちょっと多いくらいでしたが、1990年にAT車の割合が一気に7割まで上昇しました。

また運転免許の取得率を見てみても、平成26年のデータで、MT取得者は562,354人、AT限定取得者は705,564人というデータが警察庁より公開されています。

つまりもう新規に免許を取得する人たちの半分以上がAT限定免許を取っていて、実際に販売されている乗用車も98.5%がAT車となると、最早MT免許を取る意味合いが微妙に立ち位置にあると考えられます。

しかしスポーツカー好きな方はどうしてもマニュアル車に乗りたいと思うでしょうし、例えば家族が運転する時にはマニュアル車では厳しいとなる場面も考えられます。

このような状況になった時、この機構としてはマニュアルミッションと同じでパドルシフトなどで手動変速も可能というシステムであれば、MT車のようにもAT車のようにも乗れるデュアル・クラッチ・トランスミッションは歓迎されるシステムなのではないかと言えます。

修理費などの問題がないわけではないですが、選択肢としてこのような機構も一考の余地があるのかもしれませんね。

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